海外ランドスケープレポート
Amsterdamse Hogeschool voor de Kunsten Academie van Bouwkunst
オランダ・アムステルダム芸術学校・建築アカデミー

大野 暁彦さんの留学レポート
(本レポートにはPDFダウンロード版があります。)

はじめに
 私は、2009年9月から2010年8月までオランダ・アムステルダムに文化庁新進芸術家派遣制度で1年間滞在・研修していた。その期間中、研修と同時に仕事後にアムステルダム建築アカデミーに通っていた。このアカデミーには、一般の学位をとるコース以外にGuest Student といわれる一時的に学生を受け入れてくれる制度があり、その制度を利用して1年間勉強することができた。たった1年ではあったが、とても有意義な時間を過ごすことができたので紹介したい。


アカデミーの外観


実務+マスターというあり方
 アムステルダム駅から約5分、地下鉄に乗って出口を出るとその前に現れる17世紀のオランダらしい建物が目立つ。これが建築の学校だとは思えないほどにまちに馴染んでいる。

 このアカデミーの特徴はなんといっても、実務経験をしながらマスターの学位をとれるようなシステムになっていることである。

 授業のほとんどは19時半からとなっており、仕事が終わってから授業が受けられる。学生のほとんどは、学校に入学前から何かしらの仕事を持っていたり、入ってからも学校の紹介で様々なデザインオフィスで、実務経験を積むチャンスをもらうことができる。中には、既に独立した人が勉強をもう1度したいために入る人もいる。さらに、海外からの交換留学生も多く、彼らにとっては(私も含め)、海外で実務経験を積む貴重な経験を得られる場となっている。

 こうした多種多様な人がクラスメイトとしていることで、専門領域や国や文化などのバックグラウンドを超えたところでのコミュニケーションができ、楽しい。実際にプロジェクトに取り組む中でも、現行政職員側からの考えや、住民としての意見など普段事務所内では聞けない別の立場からの意見が聞くことができる。

 このようにすばらしいプログラムではあるのだが、一般的な大学院とは違い、2年間では卒業できない。年間でとれる授業数も多くはないので、おおよそ4年で卒業するのが一般的である。少し長いようにも思うかもしれないが、卒業すればオランダ国におけるランドスケープアーキテクトの資格が授与されることや、同時に実務経験を積むことができることを考えれば決して、長いものではないだろうと思う。


プレゼンテーションの様子


研究+設計というスタイル
 アムステルダム建築アカデミーは、建築・都市・ランドスケープデザインの3分野で構成されている。授業には主に3タイプあり、①デザインスタジオ、②小論文、③レクチャーである。この他に、有名な外部講師がアカデミーで講演をするCapita Selectaというものもある。学年によりこれらは、専門別に分かれるものや専門を分けないものがある。

 私は、2009-2010の1年間、ゲスト学生としてマスター3年に在籍したので、前半のデザインスタジオは建築や都市デザインの学生と共に授業を受けたが、後半のデザインスタジオはランドスケープデザインだけの授業であった。小論文は学年を通して専門が分かれない。逆にレクチャーの授業は、専門別にわかれている。

 スタジオでは、学年があがるごとにスケールが広がっていく。最初は公園や広場のようなスケールであるのに対して、3年の段階では地域スケールの計画までにスケールが広がる。3年前期のデザインスタジオは、オランダ外も対象地に入れて、あるテーマの下、分析+提言をするというものである。テーマは数年に一回変わる。ここ2年は、Street Projectというテーマで、ヨーロッパ各都市のStreetの分析と提言を行うプロジェクトを行っている。1ターム(半期)は16週間であるが、そのうち約半分は研究や分析に費やして、後半は設計やデザインに時間を費やす。

 レクチャーの授業は、毎回オランダのランドスケープアーキテクトやランドスケープ系の研究者に話を伺うというような授業で、実際の設計における教訓や今までのプロジェクトの話を聞くことが出来る。オープンデスクや働くことなく、他の事務所におけるプロジェクトや考え方を知ることができる貴重な機会である。

 小論文の授業では、デザインスタジオで行っている研究や分析に関係したテーマなどで文献や資料を読み、簡単なレポートにまとめるというものである。デザインスクールなだけあって、充実した研究活動をしたり、それを指導してもらえるということはないが、少なくとも実践で役に立つ簡単な研究や分析手法を指導してもらえる。

 このとてもシンプルなカリキュラムの基本的な視座は、研究+設計というスタイルにあり、3つの基本的な授業をとることで、設計者としての総合的な考え方を養える。


プレゼンテーションの様子


施設
 外観は、17世紀の様式をそのままに残した古い建築であるにも関わらず、内装は2006/2007年に改築されているため、非常にきれいである。基本的な設備は整えられている上に、まちなかにあるので不便さを感じない。小さいアカデミーではあるが、だいたいものは建物内にそろっているので安心できる。模型材料だけは、近くで売ってないので市の南部にある専門店で購入する必要がある。

-4階建て
-専門系図書館(一般図書館もCS駅近くにある)
-カフェテリア
-模型制作室
-大講義室
-回廊型展示スペース
-PC(Windows)・インターネット・スキャナ、コピー機など利用可。


図書館の様子


その他のデータ
※いずれも2010年現在のデータ

学費:
半期 850-2350 euro(入学形態により変動)

入学形態:
①大学卒業以上の正式入学希望学生(オランダ語必須)
②交換留学・ゲスト学生(IELTS 6.0以上)

学生寮:
特になし(相談に応じてはくれる)

開校時間:
月曜~木曜 9時~23時
金曜   9時~18時

交通:
Waterlooplein停留所またはWaterlooplein駅下車徒歩1分
-アムステルダム中央駅からトラム9番か14番で15分
-アムステルダム中央駅から地下鉄51,53,54番で5分

所在地:
Waterlooplein 211
1011 PG Amsterdam

連絡先:
Tel +31(0)20-531 8218
Fax +31(0)20-531 8240
メールアドレス info@bwk.ahk.nl  (@を半角)
ホームページ http://www.english.academievanbouwkunst.nl/en/


プロフィール
大野 暁彦(Ono Akihiko)
homepage:http://greenozon.sakura.ne.jp/


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