海外ランドスケープレポート
Otak所属 (イリノイ大学卒)
篠原千尋さんの海外就職レポート

以前Q&Aとして掲載して戴いたレポートにも具体的な授業料などを書きましたが、9.11やイラク侵略以降、大幅な教育費カットや入国管理の徹底により、昨今の米国留学事情は急速に変わってきていると思います。3年ほど経った今では年に$3000以上上乗せされており、キャンパス内のアルバイトや奨学金も減っているようです。

これから留学する皆さんのために、どなたか在学中の方にアップデートして戴いた方が良いのではないかと思います。実は私自身この秋から大学院に戻る予定があり、日本からの留学生が今どんな学校でどう過ごしているのかには大変興味があります。

イリノイ大学卒業後はシアトルの土木・建築・都市計画コンサルに就職し、それ以来国立公園から集合住宅まで、幅広いランドスケープの仕事に携わっています。

まだまだ駆け出しなのでアシスタント的な仕事が半分以上ですが、会社の性質上、他分野のデザイナーやエンジニアと接触することが多く、とても刺激になっています。アメリカ中にいくつか支社があるので、シアトルにいながらアリゾナやコロラドなど、全く風土の違うプロジェクトに参加できるのも面白いです。
篠原千尋さんが担当したプレイパーク
この間は、一昨年基本設計をさせてもらったアリゾナの小さな公園が完成し、生まれて初めて自分の描いたものが実際に建ちました。Subdivisionの設計など、私の持っているランドスケープの理想とは対極に位置するような仕事も多いですし、クライアントや予算の問題など、現実を見てうんざりしてしまうこともありますが、そんなのがどこかに吹き飛んでしまうくらい嬉しく、また「もっと学びたい、良いものを作りたい」という思いを新たにするきっかけにもなりました。

今は主に地元シアトルのPioneer Squareというアーバンプラザの改修、Station Campという州立公園のディテール設計に関っています。

先日、ダイアナ妃の記念公園などで話題になっているKathryn Gustafsonといランドスケープアーキテクトの講演に行ってきました。私は運良く何日か前に前売りでチケットを買っていたので入ることができましたが、たった一人のランドスケープアーキテクトのために会場の定員2倍以上の人が集まってしまい、シアトル市民のランドスケープ関心の高さに驚きました。講演は作品の紹介やデザインプロセスの説明がほとんどだったのですが、あまりの造形の美しさに涙が出そうになりました。

イリノイで初めて彼女を知った時は文献が少なく、白黒の平面図を睨んでどんなモノなのかを想像するばかりだったのですが、実際の空間の美しさは想像をはるかに上回るものでした。シアトルにも去年2つ彼女の作品が完成し、現在進行中の計画も多くあるので、彼女の新しい作品がまた見られるのかと思うと楽しみでしょうがないです。日本ではまだあまり知られていないようなのですが、彼女のセンスは日本人にも受け入れやすいのではないかと思います。

最近はどちらかというと理論寄りのランドスケープに興味が行っていたので、美的観点からランドスケープアーキテクチャーを見直すとても良い機会でした。 

長々と書いてしまって申し訳ありません。本職だけでもお忙しいだろう上に、あれだけの規模になったサイトを維持していくのは本当に大変だろうと思いますが、是非続けて行って下さい。私に何かできることがあれば(ウェブの知識は皆無ですが・・・)、微力ですがまた関らせていただきたいと思っています。

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