本記事は、ランドスケープMEDIAMIX:「海を超えて見つけた私のランドスケープ」の中で、雑誌記載できなかったものの中から留学体験記の部分を「ランドスケープ海外レポート」として再編集したものです。
私のランドスケープを歩んだきっかけ
振り返ってみると、ランドスケープを目指すに至るまで、たくさんの小さなきっかけがありました。会社生活をしてた頃、よく昼休みにオフィス街にあるポケットパークに足を運び、水や緑に囲まれながらぼーっとしてたり、仕事の後、カラー・リサーチ・インスティチュート(CRI)というところで、色彩学の勉強をしてたり。
特に、CRIで人工物と有機物から成る風景の色彩設計をするときに、様々な木や花の色も知らないし、わかったところでそれらは1日の間でも、時間帯や天気、光の加減で色が変わって見えるので、色彩の前段階の、自然や物理的な設計のことをもっとわかりたいと思うようになりました。
ちょうどその頃CRIの所長さんから地元清水港の再開発プロジェクトの環境色彩設計委員会のメンバーになりませんかという誘いを受けて、「私にも何かできるかもしれない!」とに思うようになりました。いずれはその当時の仕事を辞めて、新しく風致環境設計の道に進みたいなと思うようになりました。
そのために、大学で学ぼうと思いましたが、日本国内で、「風致環境設計学科」という自分で勝手に思い描いた学科名のある大学はその当時はありませんでした。なんとなくこんなことを学びたいという考えはあっても、それをどこの大学のなんという学科で学べるのか、書店で大学一覧・案内の本を手に、違う世界にいた私には検討がつきませんでした。ランドスケープという言葉をその当時は知りませんでしたし思いつきもしませんでした。
アメリカを留学先として選んだきっかけ:
同じ頃、そろそろ生活のリズムを変えたいなとも思ってました。以前からまとまった休暇の殆どを外国旅行に充てていた私は、社会人を止めて風致環境設計を学ぶために大学に戻るなら、いっそのこと外国で学ぼうかなと思いました。英語圏でイギリスとアメリカのどちらかを考えたこともありましたが、最終的にはアメリカにしました。
University of Washington(UW)を選んだ主な理由は、大学があるシアトルの地理的特徴と大学のランドスケープ・アーキテクチュア学科の内容に惹かれたからでした。
シアトルには、父の仕事先があったり、当時妹が同じワシントン州に住んでいたこともあり、以前数回訪れたことがありました。山あり水あり港ありの、地元清水に似たシアトルの地理が心地よかったこと、建築物と自然がほどよく混ぜ合わさって共存してるように見えるシアトルの街が、ランドスケープを学ぶ環境として最適だと思ったこと、そしてアーバン・エコロジカル・デザインとカルチュラル・デザインに焦点をあてた教育体制をとっているUWのランドスケープ・アーキテクチュア学科が自分の思い描いているようなことを学べる環境によくあてはまると思ったことが三大要因でした。
アメリカの大学で感じたこと(学業環境)
学科に入って先ず、学士/修士両課程の規模の小ささ、幅広い生徒の年齢層、そして生徒のバックグラウンドの多様性にびっくりしました。一学年につき各課程で約15名ずつ、合わせて30名くらいというコンパクトさ、ストレートで入ってきた生徒からから私の両親と変わらない年齢の生徒までという幅広い年齢層、そして彼らのバックグラウンドの多様性は、生徒お互いそしてプログラムにとても有効に機能してました。

教授とコミュニケーションを1対1ではかる機会も多くあり、彼らは雲の上の存在というより身近でいつでも力になろうとしてくれる、経験と知識の豊かな尊敬できる存在でした。
これでもかというくらいにあったプレゼンテーションの嵐は、英語でのコミュニケーション能力を鍛えてくれました。良いと思うデザインを作ったところで、それをどうしたら相手に効果的に理解してもらえるか、模索して試して分析してまた試して、の繰り返しでとても良い訓練でした。
また、市の機関との大学学科科目の結びつきや、実社会で活躍されているプロフェッショナルからの指導やプレゼンテーション、海外視察研究プログラム、そして実社会でのインターシップなど、非常に多くのことがカリキュラムで構成されていました。
私が特にこちらの大学で面白いとおもったプログラムを紹介します。
:アーバン・エコロジカル・デザイン
やはり、UWでのハイライトは、都市でどうやったら自然と人工物と人が共存できる環境をつくれるかを少しでも学べたことでした。水と緑と建物が美しく共存しているように見えるシアトルですが、環境問題はあります。小雨が多いわりに年間降水量が高く、氷河の後退によって作られた長細い丘(山)が多いシアトル特有の地質と地形に、人工開発によって作り出された浸透性がない面(従来の道路や歩道、巨大な駐車場、屋根など)と市の排水システムが引き起こす雨期の災害に、崖崩れ/土砂崩れ、川の水位の急変異、そして汚水の川や湖、湾への流出があります。 シアトルは様々な意味で鮭とは深い関係にあるといわれてます。
この考えに同調する1人として、このような災害がもたらす鮭の減少を、崖崩れ/土砂崩れで被害に遭う住民のことと同じように深刻に受け止めて、災害が起こる可能性を少しでも低くすることに貢献するランドスケープ・プランニングとデザインの研究や勉強をUWですることができました。
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